あなたの好意で他人に施したことをどう思っていますか?
思い方ひとつで、好かれる人にもなり、逆に恩を着せる嫌われものにもなります。信頼される人、好かれる人になるには、他人の好意だけに意識を向けることです。そうすればあなたの好意的な施しは、知らず知らずのうちに、勝手にあなたに恩返しをしてくれます。
質問です。どちらの人が信頼できる人ですか?
1.「田中さんには借りがある」という人
2.「田中さんには貸しがある」という人
ここでいう「借り」「貸し」とは、具体的な物を指しているのではなく、心の感覚です。映画や小説などで、「あいつには借りがある」とか「借りは返したぜ!」とか「恩に着る」とか使われるそれです。
多くの方が1を信頼できる人と思うのではないでしょうか。誰かに世話や手助けをされたと感じている人の方が、世話や手助けをしたと感じている人より信頼できる。何だか不思議な感じがします。しかしこれが、他人が見ている「人の心」というものです。
◆ 恩を着せる人は敬遠される
人に貸しがあると感じている人は他人から好まれません。勝手に貸しをつくられ「恩を着せられる」ことは、誰もが嫌なことだからです。
人に貸しがあると感じる心は、日常会話でぽろっと出てくる言葉や態度で他人に見透かされてしまいます。「あんなにしてやったのに」とか、「誰のおかげで」とか、そんな言葉がでてくれば、他人はその人を「貸しがあると思うタイプの人」と認識して離れていってしまいます。
◆ 借りを感じると人は好かれる
付き合いやすく、好感が持たれる人というのは、借りを感じてくれる人です。
ところで、たくさん借りをつくるのはどうも苦手という方も多いと思います。しかしここでいう「借り」はあくまで心の出来事です。あなたが「借りた」ものを相手が「貸した」と認識しているかどうかはどうでもいいのです。心配せずいくらでも「借り」はつくれるのです。
◆ 好意の返報性で知らぬ間に返ってくる恩
人は他人から受けた施しをお返ししたくなります。この気持ちは好意の返報性とか返報性の原理とかいわれます。借りをいつか返したいと思うのもまた、正しい人の心です。恩を仇で返すようなことはしてはいけません。
◆ 恩を倍返しする方法
効果的で喜ばれる恩返しの方法は、あなたの「借り」を本人がいない所で第三者に話す方法です。
「数年前、自分が困っている時に田中さんは無償で手を差しのべてくれた。おかげで今がある。田中さんにはとても感謝している」といった具合です。その話を聞いている第三者は、田中さんという人は素晴らしい人だと自然に評価します。そしてあなたのことも、借りを感じることのできる人だと認識します。これが借りをお返しする時の正しい作法です。
重要なのは本人のいない所で話をすることです。本人がいる前でいくら心を込めて「借り」を語ったところで、ただのお礼を言っているにすぎません。大した恩返しにはならないのです。
本人がいない所で話すことで、受けた「借り」がダイレクトに第三者に伝わります。あなたが受けた恩と同じだけ、本人の評価は上がります。そして、その話は人づてに拡がるものです。時として5倍にも10倍にもなって恩返しすることができるのです。
◆ 「貸し」は放っておく
あなたは「貸し」を意識してはいけません。あなたからの「借り」は他人が受け取る感覚です。いくら願っても何も変わりませんし嫌われるだけです。だから「貸し」はしたことさえ忘れて放っておきましょう。意識するのは「借り」と「借りを返す」ことだけ。そうすることで、あなたは知らぬ間に借りを返される人になれるのです。
勇作